また旅(紀行)

風花温泉へ。

 誰と別れか

 福渡あたり

 啼いて夜半ゆく  川千鳥

 

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 一年ぶりの、青春18きっぷ温泉隊出動。

 本来なら夏の終わりに新潟の秘湯めぐりをするはずだったが、なんと台風襲来の大洪水で行けなくなってしまった。今年1月に那須湯元温泉に行って以来。今回は塩原温泉で、福渡温泉の「岩の湯」「不動の湯」、塩原温泉の「紅葉の湯」の3湯制覇がミッション。とても寒い日になりそうだったので厚めのジャンパーに、手ぬぐい1本ポッケに入れて、手ぶらででかける。


  いつものようにJR近郊列車の最後尾のボックスシートを確保、エキナカスーパーで買った各人好みの酒を飲み始める。時間はまだ9時前。朝酒のうまさは格別。最近はエキナカにしっかりしたマーケットが入っているのでひじょうに便利かつ快適。


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 福渡温泉バス停で降りる。トホホなくらい閑散としている。まあ、12月のこの時期に温泉どころじゃないだろうな。
 川べりに降りて歩く。雪がうっすらと積もっていて、風花はさっきから舞っている。釣り師がちらほらといる。

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  吊り橋を渡り、結構オープンプレイスな「岩の湯」に、ざぶん。

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  ほほう、向かいの旅館からは丸見えぞな。ちなみにここは混浴だが、もちろん女性の裸身はない。相当勇気がないと入れないだろう。かなり野趣に富んだ湯で、下は砂地。目の前の川景色を見ながらちょうどいい按配の湯にしばしつかる。マナー違反なのでここでは酒はやらない。

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  舞う風花、たちのぼる湯気。俺は口笛でStan Getzの「Split Kick」を演る。それは山あいに蕩けていくのであった。

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  雪道をさくさく歩いて5分、少し川から奥まったところにある「不動の湯」に移動。

  先客が4名と、なかなかの繁盛ぶり。威勢よく脱いでざぶんとつかれば、おや、前でつかっている背中が艶めかしい。40歳くらいの女人であった。先ほどの湯とは違ってまわりは木々で覆われているし、遠くからも見にくいので女性でも入りやすいのだろう。


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  さすがに喉が渇いてきたが我慢してバスに乗り込み、5分ほど揺られ塩原温泉の中心部にたどり着く。かねてから念願の「スープ焼きそば」を食べてみようと、「こばや食堂」に向かい、キンキンに冷えたルービーで昇天しつつ、店のばばあとトークセッション。

  くだらない話をするほどもなく「スープ焼きそば」が登場。

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  冷えた体をあたためてくれる。もっとソースっぽいかと思っていたが案外中華スープっぽい。そのくせそばはソース味。なかなか面妖な食べ物ではあるな。期待ほどではないが、決してまずくはない。ばばあがやたら「紅葉の湯」を薦める。もちろんこちらも行く気で来てる。


  また吊り橋を渡り、対岸の「紅葉の湯」へ。対岸からは見えなくなっているがすぐうしろが散策路という、結構オープンプレイスな立地。例によって寸志100円を入れ、ざぶんとつかる。ここも混浴だが今度の先客は男子2名。ぬるい湯と熱い湯。こばやのばばあが先回りしてつかっていたらどうしようかと思っていたが、そんなことはなかった。



  それにしてもこの2名の先客がかなりファンキーな奴らで、熱い湯の男はやたら洗面器で湯をすくっては外に出す作業を繰り返す。「さっきまで大勢入っていて垢がすごく浮いてるからすくい出しているのだ」というようなことをとりつかれたように言ってきたが、栃木弁なのでよくわからない。まあ好きなようにやらせておこう。

   それでも垢が浮いてると言われりゃ気味が悪いので、熱いほうの湯舟に移動。ところがこっちの男のほうが凶悪だった。いきなりこっちに汚いケツ向けて、ひげをそり始める。それが終わると湯から出ようとして立ちくらみがしたのか、いきなり俺に体当たりして倒れ込んできやがった。まさかモーホなのか!?と身がまえたところ、かぼそい声で「す、すみません」と言った顔がシズオくりそつ!本気出してないだけで湯につかりに来んなよ!と悪態を心の中でつきつつ、湯から必死の脱出を試みる、中気のように手をふるえさせるシズオを見ていた。きっとこいつ、アル中かなんかだな。


  すっかりしらけつつ、温泉街を散歩。なんだかさいごに汚い湯に入った気がして、同行者に内湯に入ることを提案、快諾を得、高そうな旅館に聞いてみたところ、500円で入浴(タオルと、なぜか歯ブラシ付き)できるらしい。一同がやがやと入り、露天風呂に向かう。なかなかの絶景で、湯も綺麗、湯音も湯温もちょうど良い。気分がいいねえ。


  温泉街の半ばにあった酒屋で、帰りの電車で飲む酒を買って、店先で湯あがりのルービーをやる。これはうまい。これ飲むために生きてるのだと、いつもこういう時に思うがすぐ忘れる。



   風花が少し強くなってきて、温泉街にも人が増え始める。どうも泊りで忘年会をする会社もあるみたいだ。若い奴や女性が少ない会社なんだろうか。

  でも、どこにでも女神さまみたいな女性はいるものだ。俺が昔働いていたある会社では伊東温泉での忘年会でバストトップまで見せた女子社員もいたもんな。そういえば学生の時のコンパで、かなり酔った女の子に手をひかれついていったらトイレの個室の前で待っていてくれと頼まれたこともあったな。俺はドアの前に立ちながらかなり豪快な音をたてるその女の音に耳をすませていたのであった。共同のトイレで、幽霊ホテルと言われていた奇怪な場所でのコンパだったからという理由はあるが、それにしてもあれは忘れがたい体験だったな。・・・・何の話だ。


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  帰りの車内で日本酒を空け、そのまま大宮駅前我らが「いずみや」にて仕上げ。朝から相当呑んでるものの、適当に温泉で発散させているのが効いているのか、ずっとホロ酔い加減。

  俺はまたまたStan Getzの「Fools Rush In」を口ずさみながら、家路につく。楽しい一日であった。



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    Complete Roost Session

             Stan Getz

香(こうやつ)にて磯辺バーベキュー。

 さらに秋の海を楽しんでいる。


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   一度町に戻り、スーパーマーケットに寄る。秘密の岩場があるというので、そこに行き、簡易バーベキューを楽しもうという企画。



  昨日買った缶ビールは3本冷やしてあるので、焼く肴を。ホタテ、さんまの開き、チョリソ、焼き鳥、おにぎりなどを買う。これを味噌汁に入れるとうまいという海藻も。


 昨日も通った館山城の下の道をさらにまっすぐ進む。洲崎に向かう道。途中にというところがある。

  香と書いて、「こうやつ」と読むらしい。岩本準という、雑誌記者と漁師を半分半分で生きている人のエッセイに登場する小さな漁師町とのこと。あいにくまだこの人のエッセイは読めていないが、今回伺ったことでもあるので、その内読もうかな、と思っている。



  夏場はおそらく海水浴客で混むのだろうが、この季節には誰もいない。小さな漁港の空き地に車を停め、装備と食材を持って、細い道を歩く。みれば崖の上にセレブの邸宅がある。聞くと、某会社社長の別荘だという。あとで岩場からこの別荘を見ると、磯までベランダが続いていて、勝手に?海を家に取り込んでいた。リビングからそのままざぶん、という感じ。プールもあり、どうみてもちょっとした海辺のホテル。やはり社長というからにはこういうことをしてほしいものだ。震災の時はどうだったんだろう?


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  細い道を進むと砂浜と、岩場が広がる。ちょうどいい広さの浜だ。適当な岩場を見つけ、コンロと椅子を設置し、焼きはじめる。
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   あいにくの天気でやや寒いが、ビールを飲み食べているうちにあたたまってくる。運転するので呑まなかったともだちには申し訳ない。3本も空けてしまった。


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 殺気に気付いて上を見ると、いつのまにかトンビが集まっているではないか。食べ物を狙っているようだ。

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  そこでさんまの頭と皮などをちょっと離れた岩の上に置いて、様子をうかがった。トンビは明らかに餌を発見し、何度か急降下するが、寸止めでたどり着けない。見ていてかなりじれったい。その時、一羽の海猫がやってきて、あっという間に獲物をかっさらっては飛び立っていく。「モタモタしてるからやんけ」とトンビに言ってみる。するとトンビたちは腹をたてたらしく、海猫に襲いかかろうとしている。ちょっとした空中戦が始まろうとしている。あんたら、もっと簡単に獲れる時に何してたん?と地上から突っ込む。海猫は攻撃をかわし、去っていく。いつの間にかトンビたちも遠くを飛んでいる。


  寒くなってきたので味噌汁を呑む。うう、しみる。うまい!この海藻、かなりうまいっス。
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  撤収し、我々も帰ることにする。いやあここはいい浜だ。夏になったら車を借りて家族で来ようかな。かみさんがまだ海辺をちょっと怖がっているから(こどものことが心配だから)、もう少し時間は必要かもしれないけど。ま、彼女の気持ちもよくわかるし。


  静かな海沿いの道を戻り、別の漁港へ行く。こぶりながら昨日の「ばんや」のような店がある。食事処兼お土産屋さん。腹は満腹なので、お土産。晩御飯には間に合わないだろうけど明日のおかずにはなるだろうと、さんまの開きを買う。美味しそうだ。ともだちが「これも持っていけ」と、さざえを買ってくれる。これはその日、刺身にして食べた。はじめて食べたこどもが感激していた。



  何から何まで世話になりっぱなしで、本当に友だちには感謝。前向きで楽しい話ばかり聞けて力も湧く。とてもリラックスできた。



 ともだちは少し前に、ずっと念願だったサーフィンを知りあいを通じて体験し、何と1回だけだけど波に乗れたらしい。そのことをめちゃくちゃ嬉しそうに何度も話してくれた。

  そんな話を聞きながら、僕も実はずっとサーフインってやりたいと思っていることも話した。とにかく海で遊ぶのが好きなのだ。山や川で遊ぶのも好きなので、結局そういう遊びが好きなのだろう。


  ま、サーフィンはかなり自分にとってハードルは高いけど、それでも「いつかはやるのだ」と思っていれば、彼のようにかなう日も来るかもしれない。釣りだってかなったわけだから。

  そういえば昔、彼とワイハに移住するなんて話もしたなあ、なんてことも思い出した。個人的にではあるが、ヒロの物件も調べたりしたものだ。そういう「できるかどうかわからない夢みたいなこと」は星の数ほど準備している(笑)。小さなことに拘泥してるより、そのほうが楽しい人生だし。



 「山も登ろう。サーフインもチャンスがあればしよう。釣りもしよう。ま、お互い無理のない範囲で楽しもう!」うん、そうしよう。


 ということで、秋の海を満喫してきた、という話でした。

 

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        SOUTH OF THE BORDER

                 Y.MINAMI

 

ミャク釣りにて、かわはぎを釣る。

 ひきつづき秋の海に来ている。あいにくの天気だが、今日はまず港の防波堤で釣り。それからスーパーで材料を買って、車をとばして別の岩場に移動し、バーベキュー。そのあと別の漁港に寄ってお土産を買って帰る、というスケジュール。何といってもメインは釣りだ。


  こどもの頃、清水市(現在は静岡市清水区)に住んでいた。僕の両親も静岡市出身であり、今でもほとんどの親戚は静岡や清水に住んでいる。清水というところは港町だから、多くの親戚が漁業関係で働いている。


   また仕事は大工さんであったりするがこづかい稼ぎにうにの密漁をするおじさんもいて、幼い頃の僕は見張り役も兼ねてこのおじさんの密漁につきあったものだ。おじさんは山ほど獲れたうにを寿司屋に売りに行く。僕は褒美として鮨とさざえの壺焼きとあわびのステーキをたらふく食べさせてもらうのだ。(おじさん、どんだけ儲かってるねん)何とぜいたくな8歳!


  もうひとりのおじさんの趣味は釣りだ。船も持っていて、西伊豆あたりへよく釣りに出かけた。この時も僕は当然のようにお伴をしていたが、釣りをした記憶はない。シュノーケリングをしながらもりで魚を突いたり、うにやさざえを密漁していた記憶はおぼろげながらある。とこぶし獲りにははまっていたような気もする。船の上でおじさんがさばいた新鮮な刺身も食べていたのだと思う。なにぶん小学校低学年の頃のことなので、よく憶えていないのだ。何度かファンキーなゲロッパは吐いた気がする。


  一時期ダイビングにははまったことはあるが、その時でも釣りはやらなかった。ずっとやりたいなあとは思っていたが、縁がなくこのまま来てしまった。書店で働いていた頃、ある版元の方に強く誘われ約束まで交わしたものの、その直後にその方が異動になったりして行けなかったこともあった。


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  ということで満を持して感バリバリの釣り。ともだちは釣りマイスターなのですべておまかせ。竿、仕掛けなども用意してもらった。

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  防波堤の突端に行く。初心者が一番楽しい釣りは何だろう、ということで考えてくれたのだろう、ダイレクトに魚の引きを感じることができるミャク釣りをする。えさ、おもり、というシンプルなもの。うきも使わない。リールも基本使わない。糸を垂らし、ミャクを測りながら釣り上げる、という方法。


  えさは生き餌。朝採れ(笑)のイソメを使う。ミミズみたいなやつ。ぬるぬるとしたこいつをつかみ(ちょっと気持ち悪いがすぐに馴れる)、10センチくらいあるこいつの中央部分に爪を立てつつ半分にちぎる。もがいているのを抑えつつ、それから口に針を突き刺す。こいつは両方に口(厳密には口じゃないんだろうが)がついていて、針を突き刺すと反対側の口で噛みついてくる。まあ痛くもかゆくもない。が、ちょっとしゃくにさわるので突き刺した針をぐいぐい体の奥に押し込んでやると、結構反省しておとなしくなる。ちょっと色っぽい気もする(って、俺は変態だろうか)で、針をすっかり隠すくらい通して、先端だけちょっと表に出す。これで出来上がり。


  あとは実にシンプル。これをひょい、と落とすだけ。落とし込み釣りだ。

  狙う魚によって糸の落とす長さが違うので、そこは知識あるベテランのともだちが「このあたりの長さで」というところに目印をつけてくれた。あまり下まで落とすと釣りにくいので、その目印が「そこから下はだめよ」サイン、というわけだ。

   あとはさおを微妙に上下させて、魚を誘惑し、手先の微妙な当たりを感知したらさっと釣り上げる、というもの。なんだか武士になったみたいで楽しい。


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  防波堤に立って、潮風を感じながら神経は糸の先と手先のミャクに集中する。他のことは何も頭に入ってこない。おお、これが柳生石舟斎君が言ってた「無になる」、ということだろうか。


   落として1分もしないうちに「ビクッ」という当たりがきた。おおっ、いきなりですかい!釣り上げると魚がかかっているではないか。やったぜ、はじめての獲物だ。


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  「ああ、これはダボハゼだ。すぐ海に返そう。何にもならない」と、ともだちの冷静な突っ込み。はじめての獲物は大したことなかった。いやあ、それでもあの当たりは気持ちいい。



   それから1時間くらいだろうか、僕は満喫した。どういうわけだかカワハギばかり釣れる。「カワハギは繊細な当たりの魚だから難しいんだよ」と、友だちが笑っている。「こんだけ釣れたらいいんじゃない?餌の付け方もいいってことだし」と、ほめてくれる。今日の釣果はこれ!

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   あとで本を読んだら「ゲーム性の高い釣り。繊細な当たりを楽しめる。餌をすぐ獲ってしまうので嫌う人も多い」と書いてあった。ほほう、では餌を奪われずに釣り上げる俺はカワハギ釣りの名人なのだろうか。えへん。でも友だちが釣った魚のほうがカッコイイなあ。





  「釣りの基本は食べられるものは胃袋に入れることなんだけど、今日は海に返そう」と友だちが言い、釣った魚はすべて海に戻す。驚いたことに友だちの釣り上げた魚たちは海に戻すと元気にまた泳いでいく。それに対し、僕の釣り上げた魚は半分以上がぷかりと浮かんでいて、明らかに死んでいる。どういうわけだと聞くと、釣り上げてからすぐに針をはずしてあげること、また丁寧にはずしてあげること、これが生死の分かれ目ということだった。ううん、奥が深い。針をはずすのに手間取った僕は命を無駄にしてしまったのか。よし、次回からはこいつも課題にしよう。いろいろな意味で超楽しいな。



  ちなみにぷかりと浮かんだ魚たちはあっという間に海猫たちが奪っていった。時にはどこからか来た猫がじっと待っていることもあるらしい。それはある意味プレッシャーだな。でも猫と友情をはぐくめそうで、それも楽しそうだ。


   ああ、病みつきになりそう。さ、バーベキューに移行。

 

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    釣りに行こう

       AKIKO YANO &KAZUFUMI MIYAZAWA

海へ。

秋の海へ行ってきた。


  友だちの別宅が南房総にあり、そこに連れていってもらった。友だちの車に乗せてもらい、館山方面に向かう。


  午前11時頃に千葉を出て、遅めの昼ごはんは友だちおすすめの、保田の「ばんや」へ。

  保田漁港直営の店で、観光ガイドにも載っているくらい有名な店らしい。僕も名前は知っていた。

  着いてみると日曜日ということもあり、14時頃だったがかなり混んでいる。壁のお品書きを見て唖然とする。どうしよう、何を頼んだらいいのだろう。

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  朝採れ鮨9貫800円も魅力。すべての逸品にごはんとみそ汁を200円?でつければ定食に変わる。小アジの唐揚げ250円とか、げそ焼き250円とか、結構安い。下町居酒屋価格だが、量はかなり違う。さすがに地元だけあって、どれも量は多い。魚も地のものを中心に焼、揚、煮、刺身と幅広い品ぞろえ。店内はものすごい活気。落ち着いて食事するという場所ではない。イメージ的には日曜日の回転寿司屋とか、学食に似ているかなあ。



  いろいろ迷うが夜は刺身で呑むと決めていたので、迷いながら「いかのかき揚げ丼」にする。「それ、ここの名物だよ」と、友だちに教えてもらう。よく見れば何やら異様に盛りの多いものがひんぱんに運ばれている。ひょってするとあれがそうなのかもしれない。

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   ちょっと待って席につき、僕は「いかのかき揚げ丼」、友だちは小海老のかき揚げ丼」を頼む。食べきれない分は持ち帰れるというので夜のつまみ用にと「子アジの唐揚げ」も頼む。

で、僕が食べきれなかった。だってああた、でかいかき揚げが4枚載ってるんでっせ。国立だかどっかに30枚くらい載ってるかき揚げ丼があることは知っているが、4枚でも無理。2枚分は食べてあとは持ち帰り。ともだちのかきあげとアジもすべて持ち帰り。

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 店を出るとみやげもの屋があり、ひものも売っている。さばと太刀魚をつまみ食いしたらめっちゃ美味かった。ううん、今度は焼き魚定食にするかな。




海沿いに車は走る。途中に富浦を通る。おお、ここがあの川崎長太郎の小説の舞台となった場所か・・・と感慨深いものも。静かそうな町だ。ここにあるひもの店のさばの味醂干しが美味しいよと、ともだちが教えてくれた。事前に頼んでおくといいらしい。


 館山市内に入り、やがてともだちの家に。ちょっと休憩し、漁港のほうへ行ってみる。


  小さな漁港だが、それでも内房では大きいとのこと。自衛隊駐屯地の横をすり抜けていくと沖ノ島がある。夏は海水浴でにぎわうところらしい。どこかに似ているなあとずっと思っていたのだが、何てことはない、僕がこどもの頃すごした静岡(清水)にも似たような場所があったのだ。よく友だちと海パンいっちょうで家からチャリとばして泳ぎに行ったり、凧を作っては飛ばしにいった場所だ。僕は間違いなく幼稚園から小学3年生までは「我は海の子」だったのだ。とにかく夏場でも冬場でも海で遊んでいたなあ。

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  砂浜を歩き、沖ノ島に入る。プライベートビーチっぽいところや、天然のトンネル、洞窟(寝っ転がれる広さあり)などもあり、なかなか楽しい。こどもを連れてきたらちょっとした冒険もできるだろうし、かなり喜びそうだと思った。こういう島を最大限に活用するのはこどもとヤンキーだけだろう。
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  とりあえず僕はこういうところに来ると手頃な木の枝を拾わずにいられない。そうしてそれを振り回さずにいられない。実際それで蜘蛛の巣を蹴散らすこともできるというものだ。

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  対岸に大房岬も見える。国定公園のはずなのになぜか某政商の別荘がある場所だ。本来は住宅など建ててはいけない場所のはずなのだがね。



  潮風が気持ちいい。大きく深呼吸した。お洒落なことに、崖の下にプライベートなベンチまである。引き潮時限定だろうな。語り合ってるうちに満ち潮になったらえらいことだ。

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  明日は釣りをしようということになり、仕掛けを買いにいく。それと今夜の酒と肴。これまた地元価格のスーパーに行き、地の魚を買う。昼間聞いていたひもの屋の干物もあり、購入。いやあ、安いな。
くじらのたれも買う。このあたりならではの名物。

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あぶって食べる。ビーフジャーキーっぽくておいしい。

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 で、家に戻り、風呂に入り、酒盛り。7時前に始めた酒盛りも気付けば11時。ずっと運転しっぱなしの友だちはさすがにお疲れ(そりゃそうだろう。本当に感謝)。

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   いろんな話をする。仕事の相談もちょっとして、アドバイズもいただく。



 友だちはプロの小説家なので、いろいろ他の作家の話などもする。裏話や、創作について、作家論。書くということについて。

こういう話は常におもしろい。創造力のある人との会話は自分が先に行けるような気になるからいつでも楽しい。職場の人間関係だとか日々の仕事の愚痴など、日常のぐちゃぐちゃに拘泥するような会話は基本的に後ろ向きでつまらないから、こんな日が僕には時々あるということを、友だちにも神にも感謝したいくらいだ。


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  明日はとりあえず漁港で釣りをし、そのあと岩場でバーベキュー、もう一度別の漁港へ寄って魚を買って帰る、というスケジュール。天気がやや怪しいのが気がかり。



  静かな夜。明日は人生初の釣り。せめて一匹でも釣りてえなあ。

 


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    FISHIN‘ON  SUNDAY

                         WATARU TAKADA

 


梅雨前線に向かって。

雨模様の土曜日。

 鹿児島から来た友人ナツフクハワガラーにいちにちわけてもらって、6月の小さな旅に出た。


 月曜日から東京に来ていたことはわかっていたが、その週は僕にとっても結構へヴィなスケジュールで、彼が帰薩する最後の日しか都合がつかなかったのだ。もうひとり期間中彼とほとんど会えなかったという仲間ムーチョも加え3人で、梅雨前線に向かって電車に乗った。


 一週間もの間、毎日酒も飲み、美味しいものを食べてくるであろう彼を何処に連れていこうか?それが一番の難問だった。

  第一彼が暮らす鹿児島には黒豚、魚をはじめ、美味しいものは数多くある。東京に来るというと誰もが鰻や天ぷらや寿司には連れていくだろうとも思った。吉原の桜鍋、深川のあさり飯、野毛の中華なども考えつつ、最終的には横須賀へハンバーガーを食べにいくことにした。京急一本で行ったり来たりできるし。


  最初のプランは羽田空港で荷物を預け、三崎口まで行き、三崎港で昼飯(みさきまぐろ料理かまぐろラーメン)のあと城ケ島に渡って温泉につかる。横須賀まで戻りハンバーガーを食べて、仕上げは京急蒲田近くの餃子店で、という壮大な計画だった。 


  天気がピーカンならもっと行ってみたかった場所もあって、観音崎に向かう途中にある「かねよ食堂」。一年中海の家状態のバー。天気がよければ開放感満載のこの店でしらすピザにルービー、とも思っていたのだが、どう考えても雨は早く降りそうだったので、あきらめた。


  結局三崎もやめて、横須賀で降りる。結果的にはこれが正解。とりあえず小旅行っぽく軍艦三笠を観て、どぶ板通りのバーガーショップに。

   去年来た時は老舗の「ハニービー」に行ったのだが、今回はその時も迷った「TSUNAMI」へ。実はこの店、2回目の訪問。これで3度目の横須賀ネイビーバーガーとなる。


   みんなおなかもすいてきたので前回食ってバリうまかったジョージ・ワシントン・バーガーを3個にバドワイザー8オンスを3本、チリビーンズチーズフライドポテトにオニオンリング。ピンボール台をテーブル代わりにして、ひたすら食べる。店内にはロングボードやジュークボックス、アロハシャツ、LPレコード、安っぽい感じのミラーなどが無造作に飾られて雰囲気はいい。


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    テーブルに置かれたマスタードとケチャップをお好みで加え、3人とも「ムームー」言いながらぱくつく。ムーチョはフォークとナイフを駆使し、綺麗な断面図を描きつつ食べている。それが「てやんでぃ」BABYな僕は大きな口をあけて頬張るが、寸法が合わずに撃沈。プレートの上にいろんな残骸が散らばることとなる。


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  それにしてもうまい。こういうジャンクなハンバーガーってこんな感じで食べるのがベストだな。ま、晴れてれば言う事ないけど。なんて言ってたら外では雨が本降り。本当に三崎に行かなくて良かった。



   こんなに雨じゃどこにもいけない。ということでこういう時のために用意していたプランを発動させる。ハンバーガーが巨大すぎてしばらく腹も空きそうにないし。弘明寺まで戻り、駅前の坂道を下りつつ住宅街を抜ける。不安になってきた頃、10分ほどで「みうらの湯」に到着。京急線の高架下にあるスーパー銭湯である。ここで汗を流し1時間ほどゆっくりしようという按配。



   意外に広い銭湯の中には露天も含みいくつも湯舟があり、サウナも2種類。温泉は黒い。天然温泉だそうだ。足を伸ばし、つかる。ああ気持ちがいい。


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  さっぱりしつつ、気付けば時間も押してきたので空港まで戻る。飛行機が飛ぶのかどうかがかなり心配だったのだが、何とか飛ぶ様子。薩摩での再開を期して見送る夕方のエアポート。彼は梅雨前線に向かって飛び立つ。さあ、いつでも虹をかけてくれよ。


   その後ムーチョとルービーで仕上げ。それぞれリムジンバス利用で帰途につく。


    時間が短かったにも関わらずいろいろ話もできた。言ってはいけない愚痴もちょっとこぼしてしまった。あとで猛省する。愚痴を言ったつもりはなかったが、考えたら愚痴めいていた。まだまだ修行が足りない。

薩摩の気風は彼に合うだろう。さらなる斬り込みに期待したいし、できそうだ。


  

なかなか帰宅したメールが来ないので心配になる。遅くなってからメールが届く。

ひょっとして福岡経由で帰ったのか?そんなことおくびにも出さない彼なので、気にはなるがまあ追求はしないでおくか。

 

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     バーボン人生

              E.YAZAWA

 

北関東大回りテツの旅 その弐

JRには「大都市近郊区間内 普通乗車券・回数乗車券特例」という運賃制度がある。

   これにはSUICAPASUMOなどのパターンもあるのだが話がややこしくなるので今回は省く。気になる方は検索して、ご自分で理解を深めていただくのに限る。



   時刻表にも載っていることである。

  首都圏、関西圏、福岡と新潟にエリア設定がある。一定の条件を満たせば選択乗車が可能で運賃計算上の特例が受けられるという制度だ。

  条件とは

①当日限り有効である

②途中下車は不可。

③特急、グリーン車利用可能(但しそれぞれのチケットは別途必要)。

 基本的に新幹線は乗れない(関西で一部乗れる区間あり)。

駅の重複、同一経路は認めない。(これには各論での検証が必要で、詳しくご教授してくれるサイトは数多くある)

⑤それぞれの大都市近郊区間エリア内であること。

である。ちなみに定期券の併用も確かNGだったはず。

  こうした条件さえ満たせば以下のことが適用される。


 
「大都市近郊区間内のみを普通乗車券または回数乗車券でご利用になる場合は、実際にご乗車になる経路に関わらずもっとも安くなる経路で計算した運賃で乗車できます


「エリア内に限り、運賃計算に用いた経路(券面表示経路)以外の、他の経路を、区間変更の手続きなく乗車することができる」(旅規第157条第2項=選択乗車)


  わかりやすく言おう。秋葉原から御徒町までの乗車券130円分を購入した場合、普通はひと駅乗って降りるわけだが、これをたとえば秋葉原駅で130円で入場し、そのまま総武線で千葉へ出て、そこから内房線で安房鴨川、さらに外房線で大網、そこから成東、佐倉、成田、我孫子と回り、我孫子から常磐線で上野に入り、さいごは山手線で御徒町まで来てそこで下車、というルートに乗ってもあなたが支払うのは130円でOKということだ。(最初に買った切符で出れる、ということ)。

  キセルにはならないのである。実際にそのルートが可能かどうかは各論で検証したほうがいい。首都圏の場合、たとえば湘南新宿ラインや中央線と総武線の取り扱いなど、細かな違いもあるので。



  テツの間ではこれを「大回り乗車」という。

 改札の外には出れないから、よほど列車に乗るのが好きな人にしか薦められないが、お酒やつまみを持ちこんでのんびり風景をながめながら時にはローカルな駅のホームで1時間ほどのんびり弁当でも食べて背伸びもして、昼間の空いた電車に揺られつつ昼寝もして、海辺なら海も見て、山際なら山を見て、それで130円ならOKじゃないか、という人にはぜひトライしてみることを薦める。

 ルートは丁寧に検証したほうがいいよ。それとルートによってはかなり時間がかかるものもあるので、そのあたりは自分の体力や忍耐力に相談すべし。


   と、前置きが長くなったが、以上をふまえて、実践してきた。

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    南柏から130円(柏まで)切符で入場、新松戸~南浦和~高崎~小山~友部~柏ルート。高崎から小山までの両毛線では岩船駅で1時間ホームに滞在、山を見ながらのんびり弁当を食べたりもして、それでいて8時間くらい。


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  高崎線、両毛線、常磐線ではボックスシートがあり、そこに座る。小山から友部までの水戸線だけが残念ながらベンチシート。さすがにベンチシートでは飲食しにくいし、景色の見え方も違う。早朝に都心を抜けたので、武蔵野線から高崎線の一部で混雑したくらいで、ほぼ全線座れた。


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  昔なら駅のホームにはその土地ならではの立ち食いそば屋や名物の弁当などがあったものだが、最近は首都圏の駅ならチェーン系のそば屋とコンビニしかないのが興ざめ。それでも高崎駅では名物弁当を売っていたし、おそらく北関東系の立ち食いそば屋もあり、ちょっとだけ旅情もあり。

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  行かれる方はルートを考える際、JRのホームページなどで駅の詳細を調べてから計画に組み込むといい。改札内かホームにトイレ、コンビニ、そば屋、弁当店などがあるかどうかは重要。大宮駅のようなエキナカがある駅もあるので、そのあたりも計算に入れるといい。



 まあ、何度も言うが、ノリテツ・ノミテツにしか薦めない。


 最後だけちょっとドキドキしながら柏駅。自動改札を通すがやはりエラー。切符には入場時間が銘記されてるからあまりに時間が経ち過ぎているということでエラーになるわけね。そこで係員のいるところに行き、キップを出し、堂々と「大回りで」と言ったら拍子抜けするほどに駅員さんが「ああ、どうぞ」と、すんなり通してくれた。

かくして130円でめでたく北関東列車の旅(改札内だけど)は無事終了!

これ、爺さんになって暇になったらスケッチブックとかカメラ持って一日遊べるべ。

 

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      FIRST CIRCLE

             PAT METHENY GROUP

大回りで北関東のぐるり旅へ その壱

栃木県に岩船山という山がある。
  岩船石という上質の石が採れることや高勝寺という霊場ファンには有名な寺があることで知られる。


  石を採掘されているのであちこちを削り取られつつ岩肌がむきだしになっており、異様な山容となっている。僕はこうした異様な山容の風景が好きである。福岡の香春岳、瀬戸内の北木島(山ではないが)、戸隠山、妙義山、武甲山。なのでこの岩船山もかねがね見たいと思っていた。


  ちなみに岩船山は特撮ファンの聖地でもある。首都圏から近くて爆破を伴う撮影が可能でおまけに岩肌むき出しの荒涼とした雰囲気が戦闘シーンの舞台としてひっぱりだこなのだ。特に最近の戦隊もののほとんどはここでロケされているらしい。人工的に切り立った崖は落差も激しく、おまけに今回の地震で一部がV字崩落したとのこと。ここ数年はその崖の反響効果を見込んで何とライブイベントも行われている。日野皓正やPuffyなんかも来ているということでなかなか凄そうなイベントである。



  最初はこの岩船山に登ろうかなと考えていた。ここを起点に大平山まで辿るハイキングコースがあるのだ。残念なことに地震で登山道の一部が崩落してしまったのと、この時期の山歩きはあちこちの崩落や今後の崩落も考えられるので自粛したほうがよさそうであり、実に山歩きには良い季節ではあるが断念した次第。


  この岩船山の山容を一目見たいが、登れないのにわざわざお金をかけて行くのももったいない。どうにかできないかなあ・・・。今年のGWは近場でちょろちょろすることは決めたけどちょっと旅気分も味わいたいなあ・・・そんな空想を巡らせつつ悶々としていたある午後、天啓がひらめいた。


   そうだ、今こそ大回りだ。一度実践したかったあの大回りを今こそ実践しようではないか!

 

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    ハイウエィ

          くるり

湯治場、無濾過、硫黄の香り。

雲海閣の湯はたった400円で入れる。簡素な宿で、入浴と素泊まりだけ受け付けているらしい。番頭はこたつに入ってテレビを見ている。教わった通り、長い廊下をたどっていく。ガタガタという木の扉を開けるといきなり洞窟になっている。楽しいぞ。

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  洞窟というよりは石を切り出したあとというかんじのところを抜けると、実に雰囲気のある木の階段となる。木枯らしがガラス窓を震わせ、薄暗い階段を降りてゆく。「さっき外から見えていたのはここだったのか」と連れと納得しつつ、あまりの湯治場風の造りに早くも感激する。


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脱衣して風呂に入ると、湯船はふたつ。今度も硫黄の匂いがきつい。最初は43度の湯船につかる。凍えた体には気持ち良く、思わず「あひ~」と声が出る。湯は源泉掛け流しであり、湯の注ぎ口が変わっている。それなりに太い木をくりぬいて、そこを通して風呂に湯を入れているのだ。この湯にも主のようなじいさんが46度湯舟のはしに腰掛けており、「酸が強くて普通の蛇口や水道管ではもたないのです」と、言う。そんな湯に入っても大丈夫なのだろうか。「あそこにピアスしている人は入れないだろうか」ふと、そんなことを考える。



  やはり挑戦しないと男がすたる。爺さんにばかりふんぞりかえらせるわけにはいかない。と、46度の湯につかる。ああ、何と言う熱さだ。30秒までは数えたが、とても無理であわててあがる。すると爺さん、黙って砂時計を逆さまにし、するりとつかり、「46度となっとるが、48度くらいにはなってるかもしれんねえ」などと余裕をかます。脱帽だよ、爺さん。


  それでもさすがに46度の湯に入り、湯舟から出ると肌がすーっとして、実に気持ちいい。病みつきになりそうな快感である。そのため、僕は結局46度の湯に1分ほど入る・出るを4回ほど繰り返してしまった。



   気持ちのよい湯あみのあと、帰りのバスまで1時間ほどあるので、行きに見えた酒屋まで道を下っていく。事前にネットで調べはついている。



  月井商店というその酒屋はなかなかの品ぞろえ。栃木で有名な地酒といえばあれだが、我々はあえて旭興を選ぶ。搾りたて本醸造、無濾過生原酒全量ひとごこち米磨き65%。いかにも旨そうな酒である。

    ふだん呑んでいる酒の倍の値段はする。この旭興は太田原市にある小さな地酒蔵元で丹念に造られている酒で、年間石高も700石という、希少な酒である。しかも驚いたことに99%が地元を含む栃木県県北で消費されてしまうという、おそろしいほどの地酒なのである。元より無濾過生原酒の美味さにはまっている僕としてはどうしてもやりたい酒であった。連れも異論なく、それを1本と紙コップ、豆などを買う。


  すぐ隣には皇室にも献上したという由緒ある饅頭屋があった。あまりに寒かったため(気温は2度。地吹雪すら起こっていたほど)、そこに飛び込み、つまみ食いをしつつ、お茶をいただく。



  あとはバスに乗り、列車を乗り継ぎ、赤羽まで。夕焼けや薄暮、日の名残りなどを見ながら気がつけば旭興はもちろん、途中の駅で買ったビールも飲みほし、くだらないことでゲラゲラ笑っていたら、あっという間に浦和を通り過ぎていた。旭興は呑み口清冽で甘含み。おいしいのだが、辛口好みの僕としてはやや物足りなさも。


  赤羽で降り、「まるます家」に向かうが行列ができている。「丸健水産」も日曜日は灯りがついてない。そこで「のんき」と「かしら屋」をはしご。そこでも5杯ほど呑む。さすがにベロベロになって、解散。



   気がつけば東浦和のホームの上で武蔵野線を待っていた。途中の記憶がやや、無い。夜風が心地よく、でもそれにも増して自分の体からあふれるほどの硫黄の香り。これにはちょっと参ったな。家に帰ると早速家人より、「硫黄くさい」と、言われる。

 

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    猫

 

粉雪舞う温泉場にて。

 「鹿の湯」を出るとそこはすでに石の河原である。そして他の同様の場所と同じように、石が転がった荒涼としたところには「賽の河原」という名前がつきもの。

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  そこを登っていくとつきあたりには「九尾の狐」「玉藻の前」で有名な殺生石がある。悪事をはたらく狐を源翁和尚が封じ込めた石である。おそろしいことにこの石のまわりでは今でも硫化水素が湧きだしており、近くには入れないようにロープが張られている。まあ死にたい人はひょいとまたげばすぐ石のそばまで行ける。「疲れ切ったらこんな荒涼としたところで、硫化水素吸いこんで昇天するのもいいかもしれないねえ」などと言いあうが、口の根も乾かぬうちに「さ、ビール飲みましょ、のどがカラカラっす!」と、まさに生命力のかたまりのような二人であった。


  次の湯に向かいつつ、何も店がない。どうしようと途方に暮れつつさらに下っていく。「おお、このあたりに雲海閣という宿があるはずだが・・・」と、連れがそわそわしだす。まわりを見るがその名前がない。どうもその宿の湯だけ入ることができるらしい。辺りには他にも日帰り入浴の看板があるので、最悪そこでなくても湯にはつかれそうだが。ふと見ると向かい側の崖の上から何やら屋根がまっすぐ降りているところがある。「あれではないか?」と勇んで近づく。

  が、無情にもそこはまるで廃屋。とても営業しているようにはみえない。おそるおそる郵便受けを見ればDMやら電気料金の明細書やらが突っ込まれて、ほとんど消えゆくようなかすかな字で「雲海閣」とあるではないか。がーん。こりゃつぶれたわ。連れは首をかしげる。どうも調べによると営業していたようなのである。のどが渇いた僕は向かいに酒屋があるのを見つけ、「つぶれた~つぶれた~雲海閣つぶれ~た~」などと陽気に歌いながら酒屋に飛び込む。

   連れも首をかしげながらも「つぶれたんか・・・」と言いつつ、ビールを買い、軒先で呑む。またこの店の親爺がどうみてもアル中で、いい親爺だった。ストーブを囲みつつ談笑しているうちに「雲海閣はいつつぶれたんですか」と連れが尋ねる。「!?いや、営業してますよ」「えっ!?つぶれたんじゃないんですか」「うんにゃ、つぶれてはいませんがね」そう言って親爺は崖の上を指さす。

   そこは先ほど見た、廃屋のような建物から上にあがっていく屋根(おそらくその下は階段)の行きつく先、崖の上にあたるところだった。どうやらこの先の道を右に曲がると迂回するようにして崖の上にたどり着けるらしい。そこに雲海閣の玄関がある、というのだ。よかった。つぶれてなかったんだ。変な歌歌って悪かったよ。


  そしてこの日二つ目の湯、雲海閣の湯はこれまた実に渋くていい湯だったのである。


   つづく


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    雪が降る日に

         かぐや姫

呑みテツ・冬の陣 那須湯本 鹿の湯

少し前、冬の呑みテツに行ってきた。

  夏はいわき湯本温泉を堪能したが、今回は那須の湯本温泉である。

  同行の連れの持論は「温泉は湯元に限る」である。彼によると、湯本(元)・源泉・掛け流しというのが温泉の「よき・こと・きく」のような3種の家宝であり、温泉マニアはそこを目指すべきである、ということである。こちらとしては異議などあるはずもなく、ということでまたまた早朝の大宮駅で待ち合わせる。

   こぎれいなエキュートで連れはカップ酒とビール、豆とこんぶの詰め合わせお菓子という渋い選択。僕はとりあえずビールのロング缶1本とパックに入ったじゃこ天を買う。それにしても最近の駅には朝早くからこんなこじゃれたマーケットが空いてるんだな、と感心する。



  今回も青春18きっぷを使っているので交通費はひとり2000円ちょっと。「前の車両にだけはボックス席があるから、死に物狂いで確保すべし」というミッションの下、ホームで待機、見事にボックス席を確保する。呑みテツとなれば、やはりボックス席は必要だ。ベンチシートで蒲鉾食べながら酒は呑みにくいから。俺たちは常磐線の親爺とは違うのだから。



  やがて久喜を過ぎる。少し懐かしい。2年前までこの駅まで営業に来ていた。この街にある本屋さんに熱心な担当者がいたからだ。それでも、どんなに熱心な担当者がいても売り上げは上がらない。交通費を使って営業に行く意味があるのか?という話にもなる。いろんな事情で行かなくなってしまった・・・そんなことを考えつつ、ふと我に帰る。連れはあくまでも愉快にいよいよ酒の蓋を開ける。こちらも気合いを入れる。今日も相当呑みそうだなあ。


 

   黒磯駅からバスに揺られる。高原に入ったところで雪が急に増える。山が深くなると湯本温泉に到着。まわりが真っ白になるほどの雪が降っている。



   バス停を降り、道路沿いに下っていくとほどなく湯本温泉の共同湯・鹿の湯が見えてくる。この鹿の湯は相当に人気がある湯で、シーズン中は順番待ちまでできるらしい。

この日も吹雪のような雪が舞っているというのになかなかの込み具合であった。


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    「鹿の湯」という名前の通り、傷ついた鹿を癒した効果ある湯の秘密は、強い酸性湯だかららしい。湯の能書きにそう書いてあった。

   入浴料を払い、廊下をたどって脱衣場に入る。左を見るとそこはもう湯である。しきりもなく、湯のまわりに無数のするめが干してあるのが見える。違った、するめではなくあれはじじいたちだ。今さら湯につかって長生きなどしなくてもよさそうなのにと思いつつ、こちらも裸になる。



 

 非常におもしろい造りである。正方形の湯船が全部で6つある。縦2列でそれが横に3つ。手前から41度、42度・・・とある。ほほう、ひとつづつ湯の温度が違うわけだ。一番奥の湯はなんと48度である。異様なのはその正方形を取り囲むようにスルメたちが体を休めていることである。さすがに48度、46度のところには少ないが、43度と44度のところは密集だ。ちょっと途方に暮れつつ、とりあえずスペースが空いていた42度の湯船に浸かり、周囲を観察する。


   湯船はまあつめれば30人くらいは浸かることができるのだろうが、大人の流儀として、だいたい7人を限度としているようだ。

   じっと見ていると、ひとりが湯船から出ると、周りを囲んでいたスルメの中からひとりがスッと満を持したように体を滑り込ませていく。そうして空いた待ち場には別の人がやってきて待機する、というルールになっているようだ。そのローテーションがなかなか完成されていて、見事なものだった。


  46度の湯に挑戦しようと隙を窺っていたが、こちらはもっと強烈なルール下にあるようだった。それぞれの湯船には主のようなじいさんが上座に座っているのだ。銀髪、痩身。川端康成のようなじいさんたちだ。そいつらが冥途にも行かずに湯に来て、アマチュアを威嚇している。マイ砂時計を持参し、決して「ざぶん」も「ちゃぽん」も鳴らさずに湯に溶けるように体をすべり込ませて、時間を計っては電光石火のように湯から出る。それを繰り返す。あまりに見事な所作なので、こちらの気持ちは萎えてしまった。あんな主の監視の下、入る気がしない。そもそも46度って相当に熱いだろうし。



  小一時間入って、風呂からあがる。とてつもなく強い酸性の湯であった。白濁した湯は硫黄の匂いが強く、体もヒリヒリする。でも風呂からあがって廊下で休んでいると途端に肌がスベスベしていくのがわかる。これはいい湯だ。今日はこのあともう1軒湯に浸かるのである。外は相変わらずの雪まみれだが、体はまだポカポカとし、実に良い塩梅である。



   つづく

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     白い冬

        ふきのとう

 

尾道 ②  1985


 

最終的には千光寺にも登る。

  このエリアをくまなく歩くだけで確実に一日は終わる。「こもん」はロープウェイ乗り場の近所。広い坂道(石段)には有名な豆屋もあるが、買ったことはない。ちなみに千光寺上にある「文学の小道」は素晴らしい。「転校生」で、からまれた一美の一男が不良を撃退したのもここ。

その場所から少し下ったところ、「大屋根はみな寺にして風薫る」の句碑が建っている少し手前に、せり出した切り出し岩があり、僕はこの岩がとにかく好きだった。この岩の上に座り、尾道の風景をいつまでも眺めていたのだった。

 

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  エリア6は国道(県道?)をはさんださらに東側。ここには聖地・御袖天満宮がある。

  「転校生」でふたりが入れ替わる場所だ。他にも「時かけ」のタイル小路などもあり、みんな「桃栗3年柿8年 柚子は9年でなり下がる 梨の馬鹿めが18年」と唄いながらたこのように身をくねらせて歩いているのをあなたも見ることができるであろう。どうやら最近はこのタイル小路は変わってしまったらしい。あまりにファンが訪れるものだから、住人が閉口してしまったのだろうか。

 

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エリア7は比較的新しいエリアで、僕自身も開発は後手に回っていた。御袖天満宮より東側、ほぼ尾道大橋のたもとあたりまで。ここでの聖地は「ふたり」で、蛍じゃなく中嶋朋子がトラックにはさまれてしまう坂道がある。またひっそりとしたお寺もあって、なかなか静かでいいところだ。このあたりまで足を伸ばす観光客はまずいないが、地元の人から見れば確実にロケ地めぐりをしている人に見えるので、心の準備だけはしておいたほうがいいかも。ここから水道の方に出れば西山旅館や歓楽街、「転校生」の一男の家などがある。


 

福本渡船で向島に渡ると海水浴場もある。連れだって遊びに行ったこともある場所だ。11月の海はもちろん泳ぐのに安全でも適切でもない。僕らはただ蜜柑山を巻いて続く山道を、「さびしんぼう」でヒロキがそうしたように、いつまでも歩いていた。


 

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光る波の間をあえぐようにして船が行き交う。

造船所の大きな建物や、海をさえぎりながら渡っていくフェリーや、それから制服姿の女子学生たちが船を待っている桟橋。

尾道に陽の暮れる時刻がやってきたのだ。

 

国鉄(!)の跨線橋の上で、ゆっくりとうす暗くなる尾道の海を見ていた。

鐘が鳴った。ロープウェィの終電の合図のベルが鳴った。

城に灯がともった。宝塔がサーチライトに浮かび上がった。

 

カメラのファインダーをのぞくと、尾道はもう真っ暗になっていた。

 

フェリーに乗り損ねた中学生の男の子が悔しそうに、

それでも、近くの本屋へと駆け込む。

 

港の通りでは老婆が屋台を出している。

コロッケにはんぺん、キスの天ぷら、じゃがいものフライにハムカツ。

小さな電燈の下で、新聞紙ににじんだ油が哀しい。

 

尾道に 本当に 夜が降ってきた。

 

千光寺の裏山の、大きな切り出し岩の上に座って、月灯りににじむ町を眺めた。

尾道の夜景の、なんと淋しいことか。

 

センチメンタルな、置き忘れられたような町。

僕の心をとらえて、離さない町になった。

 

こんな思いを

どう言えば わかってもらえるか わからない。

 

尾道の夜景をいつまでも眺めながら、僕はまたいつも考えていることを繰り返し考え始めていた。

 

人間の若さもすぐに終わる。もう時間はないんだ。

 

こんなふうにセンチメンタルをまとった、置き忘れられたような小さな町で、こんな淋しい場所で、安穏とすることに訣別するべきなのだ。

 

 いつまでも忘れられないものがそこにあっても、

 もう 行かなけりゃならないんだ。

 

 

 これは23歳の僕が、ある人に書いたものだ。

今読むと、とにかく何かにとりつかれてるかのようにしか思えない。

 

まあ、あの1985年という1年間は今考えてもいろんな意味で奇跡のような、素晴らしい年だった。さいごには愛するチームの優勝という信じられないことまで起こってしまうのだから、あれはきっと神様が与えてくれた年だったのかもしれない。

 

 そんな年、僕ははじめて尾道と出会った。


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           CHOPIN

                 Wakare no kyoku

 

 

 

 

 

 

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