脚本家の市川森一さんが亡くなった。
今年は本当に好きな方が何人も亡くなった年だった。歳を重ねたわけだからしかたがないのかもしれないが、切ない。
僕はこの人のドラマが大好きで、とりわけ思春期には大きな影響を受けたものだ。
最初の出会いは「ウルトラセブン」だ。今さら僕ごときが言う必要も無いのだが「ウルトラセブン」は僕らの世代には決定的な影響力を持っていた番組で、市川さんはどちらかといえば円谷マターではなくTBSマターで起用された人でもあった。このあたりは氏が書いた「私の愛したウルトラセブン」などを読むとよくわかる。「北へ帰れ」「盗まれたウルトラアイ」などはいい話だった。「帰ってきたウルトラマン」でも「ふるさと地球を去る」なんていうすごい話も書いている。
市川さんは長崎県諫早市の出身。敬虔なクリスチャンで、作品にもその影響はかなり出ている。
85年に書いた「親戚たち」はこの諫早を舞台にしたドラマで、ふうけもんの雲太郎を演じた役所広司と、サントスの根津甚八のアンサンブルが良かったのと、何より諫早の用地買収話を軸にしつつ親戚たちが解体されてゆくという、なんとも素晴らしい作品だった。
今でも最終回で、根津甚八が自分を土壇場で裏切った手塚理美に向かって言うセリフ、「おいもあんたを愛してる。ばってんが、あんたはおいの夢を打ち砕いた。夢を奪った女とは一緒になれん」は忘れられない名言。また、諫早の詩人・伊藤静雄の詩がひんぱんに出てくる(雲太郎が女を口説く時に使うから)のだが、この冒頭の一節は憶えてしまったほど。「北の国から」があまりに有名だが、同じ中村Pの作品ではこの「親戚たち」も見逃してはならなかった、かなりおもしろいドラマだったと思う。
「傷だらけの天使」では全話の中で8本しか書いてないが、何と言っても第一話と最終話が市川作品。多分これ以上のドラマはその後結局なかったんじゃないか?と今でも思えるほど、素晴らしいドラマだった。
最終回、亨が「淋しいよ、みんないなくなる・・・」と言ったあとで階段から転げ落ち、「ここは寒いなあ」と言いながら馬券握りしめ死んでいくところなどは今見かえしても切ないだろうな。
「淋しいのはお前だけじゃない」は市川さんの代表作だろう。完璧なドラマだった。
元は「港町純情シネマ」の姉妹編とでも言うような流れで作られたドラマだが(もちろん話は全然違う)、借金返済と旅回りの大衆演劇の一座と取り立て屋と間にはさまれた男、という構図が抜群で、大衆演劇のパロディを隠れ蓑にしつつ、リアリティとファンタジィとをうまく調和させてしまったし、大団円は「スティング」ばりの展開とあっては、ドラマ好きなら必見だろう。
「黄金の日々」は歴代大河の中でもかなりおもしろかった作品。
織田信長(高橋幸冶が快演)の狂気とカリスマぶりはこの作品が一番出せていたように思うし、のこぎり引きや窯湯で、磔など、割と残酷な描写も少なくなかった。氏のクリスチャンであるという部分がかなり投影されていて、荘厳な趣すらあった。
特に夏目雅子演じるモニカは綺麗だったなあ。
地味ながら小品にも愛すべき作品は数多くある。その構成に感心したのは「万葉の娘たち」。
奈良の女子大が舞台。ある奈良の短大でひとりの女講師が入水自殺したところからはじまる物語で、それに関連した4人の女子大生の話をそれぞれの立場から描いた4話連続もの。毎回同じ場面が登場するが立場によってまったく違う状況に見える、ということを実に巧く見せてくれた。
「夢の指輪」は、実際の氏の体験からインスパイアされた物語。療養所にいる病弱な母が窓から形見として投げ渡した指輪。うまくとれなかったということがトラウマになっていて・・・というプロローグが印象的。「鬼の恋舟」の根津甚八もギラギラしていて楽しい。
それにしても加藤和彦も市川森一も忌野清志郎も亡くなってしまうなんて。これでショーケンまで亡くなったらホントさみしいよなあ。
BGM
LOVE IS BLIND (「グッバイ・ママ」より)
JANIS IAN























