誰と別れか

 福渡あたり

 啼いて夜半ゆく  川千鳥

 

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 一年ぶりの、青春18きっぷ温泉隊出動。

 本来なら夏の終わりに新潟の秘湯めぐりをするはずだったが、なんと台風襲来の大洪水で行けなくなってしまった。今年1月に那須湯元温泉に行って以来。今回は塩原温泉で、福渡温泉の「岩の湯」「不動の湯」、塩原温泉の「紅葉の湯」の3湯制覇がミッション。とても寒い日になりそうだったので厚めのジャンパーに、手ぬぐい1本ポッケに入れて、手ぶらででかける。


  いつものようにJR近郊列車の最後尾のボックスシートを確保、エキナカスーパーで買った各人好みの酒を飲み始める。時間はまだ9時前。朝酒のうまさは格別。最近はエキナカにしっかりしたマーケットが入っているのでひじょうに便利かつ快適。


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 福渡温泉バス停で降りる。トホホなくらい閑散としている。まあ、12月のこの時期に温泉どころじゃないだろうな。
 川べりに降りて歩く。雪がうっすらと積もっていて、風花はさっきから舞っている。釣り師がちらほらといる。

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  吊り橋を渡り、結構オープンプレイスな「岩の湯」に、ざぶん。

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  ほほう、向かいの旅館からは丸見えぞな。ちなみにここは混浴だが、もちろん女性の裸身はない。相当勇気がないと入れないだろう。かなり野趣に富んだ湯で、下は砂地。目の前の川景色を見ながらちょうどいい按配の湯にしばしつかる。マナー違反なのでここでは酒はやらない。

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  舞う風花、たちのぼる湯気。俺は口笛でStan Getzの「Split Kick」を演る。それは山あいに蕩けていくのであった。

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  雪道をさくさく歩いて5分、少し川から奥まったところにある「不動の湯」に移動。

  先客が4名と、なかなかの繁盛ぶり。威勢よく脱いでざぶんとつかれば、おや、前でつかっている背中が艶めかしい。40歳くらいの女人であった。先ほどの湯とは違ってまわりは木々で覆われているし、遠くからも見にくいので女性でも入りやすいのだろう。


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  さすがに喉が渇いてきたが我慢してバスに乗り込み、5分ほど揺られ塩原温泉の中心部にたどり着く。かねてから念願の「スープ焼きそば」を食べてみようと、「こばや食堂」に向かい、キンキンに冷えたルービーで昇天しつつ、店のばばあとトークセッション。

  くだらない話をするほどもなく「スープ焼きそば」が登場。

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  冷えた体をあたためてくれる。もっとソースっぽいかと思っていたが案外中華スープっぽい。そのくせそばはソース味。なかなか面妖な食べ物ではあるな。期待ほどではないが、決してまずくはない。ばばあがやたら「紅葉の湯」を薦める。もちろんこちらも行く気で来てる。


  また吊り橋を渡り、対岸の「紅葉の湯」へ。対岸からは見えなくなっているがすぐうしろが散策路という、結構オープンプレイスな立地。例によって寸志100円を入れ、ざぶんとつかる。ここも混浴だが今度の先客は男子2名。ぬるい湯と熱い湯。こばやのばばあが先回りしてつかっていたらどうしようかと思っていたが、そんなことはなかった。



  それにしてもこの2名の先客がかなりファンキーな奴らで、熱い湯の男はやたら洗面器で湯をすくっては外に出す作業を繰り返す。「さっきまで大勢入っていて垢がすごく浮いてるからすくい出しているのだ」というようなことをとりつかれたように言ってきたが、栃木弁なのでよくわからない。まあ好きなようにやらせておこう。

   それでも垢が浮いてると言われりゃ気味が悪いので、熱いほうの湯舟に移動。ところがこっちの男のほうが凶悪だった。いきなりこっちに汚いケツ向けて、ひげをそり始める。それが終わると湯から出ようとして立ちくらみがしたのか、いきなり俺に体当たりして倒れ込んできやがった。まさかモーホなのか!?と身がまえたところ、かぼそい声で「す、すみません」と言った顔がシズオくりそつ!本気出してないだけで湯につかりに来んなよ!と悪態を心の中でつきつつ、湯から必死の脱出を試みる、中気のように手をふるえさせるシズオを見ていた。きっとこいつ、アル中かなんかだな。


  すっかりしらけつつ、温泉街を散歩。なんだかさいごに汚い湯に入った気がして、同行者に内湯に入ることを提案、快諾を得、高そうな旅館に聞いてみたところ、500円で入浴(タオルと、なぜか歯ブラシ付き)できるらしい。一同がやがやと入り、露天風呂に向かう。なかなかの絶景で、湯も綺麗、湯音も湯温もちょうど良い。気分がいいねえ。


  温泉街の半ばにあった酒屋で、帰りの電車で飲む酒を買って、店先で湯あがりのルービーをやる。これはうまい。これ飲むために生きてるのだと、いつもこういう時に思うがすぐ忘れる。



   風花が少し強くなってきて、温泉街にも人が増え始める。どうも泊りで忘年会をする会社もあるみたいだ。若い奴や女性が少ない会社なんだろうか。

  でも、どこにでも女神さまみたいな女性はいるものだ。俺が昔働いていたある会社では伊東温泉での忘年会でバストトップまで見せた女子社員もいたもんな。そういえば学生の時のコンパで、かなり酔った女の子に手をひかれついていったらトイレの個室の前で待っていてくれと頼まれたこともあったな。俺はドアの前に立ちながらかなり豪快な音をたてるその女の音に耳をすませていたのであった。共同のトイレで、幽霊ホテルと言われていた奇怪な場所でのコンパだったからという理由はあるが、それにしてもあれは忘れがたい体験だったな。・・・・何の話だ。


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  帰りの車内で日本酒を空け、そのまま大宮駅前我らが「いずみや」にて仕上げ。朝から相当呑んでるものの、適当に温泉で発散させているのが効いているのか、ずっとホロ酔い加減。

  俺はまたまたStan Getzの「Fools Rush In」を口ずさみながら、家路につく。楽しい一日であった。



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 BGM

    Complete Roost Session

             Stan Getz